というのが私が常々思っている獣医師としてのスタンスです。病気になったときまずどうしたらよいか飼い主さんに選択肢を提供することができなければならないと思います。命に関わるような重大な場面は別として、獣医側からの見解が飼い主さんにとって押しつけになってはなりません。“いわれるがままにやっていたら莫大な費用がかかった。”、“指示に従っているのに状態が悪化している。”といったトラブルはやはりインフォームド・コンセントがなっていなかったことのあらわれでしょう。獣医師それぞれの経験や見解の違いで飼い主さんへの選択肢は異なってくるでしょうが、“治療法にはこのような方法があります。この方法にはこのような利点もあるがこのような欠点もありますよ。そして費用はこの位かかりますよ。”といった予測しうることは全て提示しなければならないと思います。そして納得いった上で治療を進めていくことが本筋でしょう。これからも治療に当たっていい道案内ができるよう治療法の引き出しを増やせるよう心懸けていきたいと思っています。
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お盆初日にして・・・。
今まで気にかかっていたこと2つが今日解消されました。1つはチワワのお産。交配した日にちが不明だったためマメに病院に通ってもらい胎児の状態をチェックしていたのですが、昨日帝王切開にて無事4匹の赤ちゃんを取り上げることができました。体重もばらつきなく無事に成長することを祈るばかりです。もう1つは会陰ヘルニアの手術をした犬の抜糸と経過でした。手術は今回が3度目でしかもヘルニア内容に膀胱が突出してしまっていた症例でしたが、術創もきれいになり排便も排尿もいきむことなくできているようで飼い主さんと共々“ほっと”一安心です。これからも経過をよく観察していかなければなりませんがとりあえず一段落といったところです。お盆初日に何事もなく過ごせたことをご先祖様に感謝しなければいけませんね。
確かな情報を得るために
セカンド・オピニオンを得るための情報を得ることは、飼い主さんにとってはなかなか難しいことだと思います。獣医医療にはまだ専門医というものが確立していませんから、週刊誌にあるような“〜のことなら〜病院”といった特集があるわけでもありません。だた獣医学関係の雑誌にはそれぞれの分野について得意としている先生の記事などを目にすることがあり、そういった先生を紹介してもらうことができればベストなんでしょうね。私の知っている限りでは【二歩先をゆく獣医さん】光文社、【頼りになる犬+猫の先生】三推社、という本に各分野で活躍されている先生方の情報が載っています。どちらの本も獣医学関係の雑誌で目にする先生方が名を連ねているので間違いないかと思います。みなさん参考にしてみてください。
ちょっと休暇が欲しい・・・かも。
当院の休診日は木曜日のみ。今年のお正月は3日くらいお休みを頂きましたが、それ以降は木曜日以外休んでいないような気がします。【動物に関わる=命に関わる】ということになるので、休みを優先することはできません。木曜日だからといっても術後の入院がいれば、まるっきり病院を空けることはできません。今思えば横浜での勤務医時代、ローテーションで休みをもらえただけ有り難いことだったと思います。ちょっと愚痴っぽくなってしまいましたが、なんやかんやいっても休みを取らないのはこの仕事が好きなんでしょうね。そうこうしているうちにもうすぐお盆です。当院もお盆期間中は診療時間が変則的になります。詳しい内容が決定しましたらお知らせにEntryさせて頂きます。それではみなさん、楽しいお盆休みをお過ごしください。
よかったぁー。
2日前のことですが、【今まで平気なことでも・・・】でEntryしていたボーダーコリーとそのオーナーさんが抜糸のために来院しました。もちろん今回は無事抜糸することができました。そして何より嬉しかったことは手術の際に取り上げた子犬が順調に成長していたことです。今だからお話しすることができますが、このボーダーコリーは10歳。正直、これだけの高齢犬の帝王切開は経験したことがなかったので子犬がしっかり育つのだろうかということも心配でした。けれどもオーナーさんはボーダーコリーをブリーディングして約20年の経験から平気だといっていましたが本当にその通りでした。次回は3週間後に第1回目のワクチンに診察することができます。来年にはオーナーさんの母国オーストラリアに行くとのこと。それまで何事もなく成長してくれることを願います。
念願の一品
予てから“整形外科に使用する骨ネジを収めるトレーが欲しいなぁ”と思っていたのですが、ペネットさんが製品化してくれました。整形外科器具を扱っているメーカーにも似たようなものはあったのですが、最近の小型犬ブームで整形外科手術に使用するネジも一番小さいものでφ1,5mmとなり、それを含めた他のネジを1つのコンテナーに収納できるものがありませんでした。今回製品化されたトレーはφ1,5mm〜φ3,5mmまでのネジを収納することができ、長期滅菌状態が可能なコンテナーに収めることで急な手術にも対応できるようになっています。ペネットさんの連絡先は?047-105-1871です。興味を持たれた先生がいらっしゃいましたら連絡してみてください。
どうしても手術が必要なとき
日々診療していると、身体の状態が悪いのだが原因を除去するためにはどうしても手術が必要になってくる症例に出くわすことがあります。ここでお話しする状態が悪いというのは貧血傾向であるとか、血液検査でTPやALBが低く術後の経過が思わしくないであろうものとか、術中に出血を多く伴うであろうものに限っての話になりますが、そういった際に当院では写真にある乾燥プラズマというものを使用しています。人のように血液型が明瞭で血液のストックが常にできない動物医療においては、輸血といっても手軽にできるものではありません。また輸血するにも血液型(DEA1.1 1.2 DEA3〜8)が多種ある犬では適合するものを探すだけでも大変なことになります。乾燥プラズマは人の成分輸血のようなもので、血液型に関係を気にすることなく犬の状態によって投与量を加減すればよいので獣医師としては使用しやすい血液製剤になります。けっして安価なものではありませんが、実際使用していると予想されるトラブルを回避することができています。飼い主さんから“乾燥プラズマを使いたい”というような機会はないと思いますが、獣医療にはこういうものもあるということを知っていただければと思います。
今まで平気なことでも・・・。
梅雨明けが待ち遠しい今日この頃、前線が活発なせいか今日も朝から強い雨が降り続いている宇都宮です。火曜日の話なのですが、雨降る午前の診療時間をゆっくり過ごしていると先日帝王切開〜避妊手術をさせてもらったボーダーコリーが抜糸のため来院されました。予定どおり抜糸をするはずだったのですが・・・ [もっと読む…] about 今まで平気なことでも・・・。
熱中症〜なぜ怖いのか〜
新聞でも今年としての最高気温や熱中症(熱射病)の記事を目にするようになりました。今までも何度かこの話題に触れてきましたが、どうして熱中症(熱射病)が命を脅かすほど恐ろしいものなのかを説明させてもらおうと思います。体温は視床下部というところで設定・調節されているのですが、身体が生理的に体熱を冷却することのできる能力をを越えた高熱に曝されることで、身体を構成している細胞のタンパク質および酵素・細胞膜の熱変性によって組織の壊死が生じることになります。これが進行すると多臓器不全という状態に陥ります。具体的な臓器の症状としては、脳浮腫・循環血液量の減少および心筋壊死・胃腸粘膜壊死・腎不全・播種性血管内凝固などどれも命を脅かす恐ろしい症状です。これらの多臓器不全を生じさせる危険な体温は43℃、その高温状態にどれだけの時間曝されていたかによって救命率や後遺症の有無が決まってきます。ということは発見してからいかに体温を下げながら病院に駆け込むことができるかも重要になってきます。熱中症は屋外だけでなく屋内でも起こりうるものです。日頃の温度および湿度の管理、そして充分な水分を摂ることができるような環境作りを心懸けてください。
湿度と皮膚病
犬猫を飼っていると、必ずといってよいほど経験する皮膚病といえば膿皮症ではないかと思います。特に梅雨のじめじめした時期は皮膚のバリアー機構が破壊されやすく、皮膚に存在する正常な細菌叢が変化することで症状を引き起こします。甲状腺機能低下症・アレルギー(ノミ、アトピー、食物性、接触性etc.)・皮膚の脂漏症などの基礎疾患をもっている場合は、健康なものと比べるとその発症率は高くなると思われます(場合によってはトリミングがきっかけになることもあります)。原因菌はStaphylococcus intermediusというブドウ球菌の一種の感染が発端で、症状の進行とともに様々な細菌が増殖し皮膚の状態を悪化させていくようです。症状は軽いもの(表在性)から皮膚の深部にわたる重度なもの(深在性)まで様々ですが、消毒と適切な抗生物質の投与で速やかに改善していきます。湿度が多いこんな時期、食べ物では食中毒、ペットでは膿皮症に注意ですね。