予てから念願だった手術室モニター(GE dash3000 フルスペック)を購入することができました。今までは心電図+パルスオキシメーター+心音モニターなどを組み合わせて麻酔を監視していたのですが、これからは心電図+パルスオキシメーター+カプノメーター+血圧+麻酔ガス濃度など安全な麻酔管理をするのに十分なものとなりました。本来ならばもっと早く導入すべきものだったのですが、使用感や大きさなどから当院の手術室に適当なものが見あたらず気にして探していたところ性能・大きさともにマッチするものを見つけることができました。更にこのモニターの素晴らしところはミスアラームが少ないことと、電気メスを使ったときの電気をブロックしてくれるため心電図が乱れないところにあります(←通常は電気メスのしようと同時に心電図が乱れます)。難しい手術を行うようになると麻酔時間が長くなるため、生体の細かな情報を得ることが不可欠です。今回のモニター導入で、より安心して手術に集中することができます。どちらかというと人医の病院が多く導入しているモニターなのですが、メーカーの方は“これからは動物病院にも”と考えておられるようで非常に丁寧にセッティングしていってくれました。もしかすると動物用モニターとしての選択肢の1つになっていくんではないでしょうか。
頑張ってるのに・・・悲しい一言。
ガソリン価格をはじめ色々なものの値段が上がる中、“どこどこの店は便乗値上げして、ぼったくりだよ”といった話を耳にすることがあります。【ぼったくり】という言葉は動物病院にも向けられますが、内容如何によっては正直不快な言葉です。もし仕入れ値が同じものをある病院では500円、別の病院では2000円で販売していたとしたら後者の病院は【ぼったくり】といわれても仕方がないでしょう。しかしながら手技的なもの、特に手術に対してこのようなことを言われるのは悲しい限りです。同じ手術でも縫合糸で止血する病院もあれば、チタン製のクリップで止血する病院、さらには体内に異物を残さないようにするため特別な止血装置で止血する病院もあります。同じ効果が得られるならどれでも一緒と思われるかもしれませんが、少しでも早く身体に負担をかけないようにと考えると高額な器機(もちろんこれだけではありませんが)に投資をせざるおえません。そうなれば多少なりとも手術料金に開きが出てしまうのもご理解いただけるのではないでしょうか。手術もしていないのに、しているように見せかけて高額な請求をするようなことこそ【ぼったくり】であって、少しでも身体への負担を少なくするために麻酔時間を短く素早く手術を行おうと技術の向上に努力している獣医師も世の中にはたくさんいます。患者さんにとっては手技の内容などについてはわかりにくいこともあるかと思いますが、獣医さんに手術で【ぼったくられた】なんて言わないでください。
とうとう獣医医療の現場にも・・・。
昨日インターネットを見ているとこんな記事がありました。【ペットの診療費踏み倒し横行 人間と違い保険効かないから?】その内容は虚しくなってくることばかりです。タイトルには〝とうとう〟と付けましたが、身近な先生との話にはこの話題がちらほら出てはいました(当院にも入院費や検査代を払っていただけない患者さんがいました)。気になった内容としては【治らなかった病気の治療費は払いません】というものでした。ここはインフォームドコンセントの問題かもしれませんが、診断〜治療する過程には必ず何らかの費用がかかるのは当然のこと。保険が利かない分、料金に差があるにしても治らないなら料金は払いませんとはなんと勝手な言い分でしょう。獣医よりのコメントになってしまいますが、より確実な診断や処置をするために高額な器機を導入することは決して容易なことではありません。一方では十分な診断〜治療が受けられなかったということで重大な問題が生じ裁判になっている事例もあります。このようなことが増えていけばその地域における獣医医療の向上も望めないのではと思います。病院(医師)と患者さんとの信頼関係、これこそが今必要なことなのかもしれませんね。
獣医は何でもできなくちゃ。
前回からのEntryからだいぶ間が空いてしまいました。5月は狂犬病の予防接種やフィラリアの予防も始まることから診療で手一杯になってしまい、ネットすら開くことができないような状態でした。そんな5月ですが、今年は有り難いことに例年を上回って手術や麻酔処置の予約を受けてしまい多忙な日々(自分でいうのもなんですが)を過ごしております。タイトルにもありますように獣医ってホントオールラウンドプレイヤーだなぁと思います。今月は産科としては猫の堕胎手術が続き、パピヨンの胎盤剥離による緊急帝王切開、整形外科としては膝蓋骨脱臼の整復術、骨折整復後のギブスの巻き替え、大腿骨骨頭切除術、そして歯石除去。なかでも少しずつ整形外科の処置が増えてきていることは、自分としても得意分野としてやっていきたいところなので嬉しい限りです。専門分野を極めることは到底大変なことですが、こつこつ努力を積んでいくことで将来大きなものを得ることができればいいなぁと思っています。このblogも間隔が空いてもしっかり更新しなくては・・・。
師の背中、遙か遠し。
昨日は木曜日の休診日を利用して、自分には手に負えない症例(前肢の骨格異常→橈骨形成異常?)の手術してもらいにみなとよこはま動物病院にいってきました。ただ永岡先生が手術するのを見るだけでは身にならないので、自分が持っている技術で手術するならばということシミュレーションして挑ましてもらったのですが・・・。目から鱗が落ちるというか、整形外科を知り尽くした人だからこそできる技術をみせてもらいました。手術前には著しく湾曲していた前肢が、術後にはほぼ正常な形態になっていました。自分なりに参考書を読んでシミュレーションしていったことがいかにレベルの低いものか、そして参考書の手技がいかに遅れているかということをまじまじと思い知ってきました。
手術が終わったあとに永岡先生に“反対足は自分でやってみな”といわれましたが、これは“手先が器用なだけでは到底できるものではないぞ!”といわれているような気がしました。マラソンでいったら永岡先生は既にゴールのテープを切ろうとしているところで、私はまだスタートもできていないような・・・。まだまだ自己研鑽が必要だ。頑張らなくては。
最近、ガンが多いなぁ。
今年に入って脾臓をとる手術が3件続き、その全ての検査結果がガン系のものでした。そして昨日ある先生のところで行った手術も明らかにガンと思われるものでした。自分の伯父や父が第一線で仕事をしていたときには、診断がつかなかっただけなのかもしれませんがこんなにもガンは多くなかったような気がします。昔から変わらない病気もあれば、診断技術が向上したことにより判るようになった病気。特にガンは犬猫の生活様式が変わったことによって増えてきたような気がします。
犬猫では明らかではありませんが、人間は2人に1人の割合でガンになる可能性があるという記事を何かで読んだことがあります。たばこやお酒をやらない人がガンになったという話を聞いたこともあります。健康に気をつけていてもガンはいつ襲いかかってきても不思議ではないようです。やはり早期発見・早期治療が何よりの防衛策なのでしょうか?なんにせよ、ガンは嫌な病気ですね。
今年に入って3件目の・・・。
先週の金曜日脾臓摘出術を行いました。13歳のラブラドールが急に倒れ、何処かわからないけれど痛そうにしているということで来院されました。血液検査してみるとHt値が16%、エコーでは脾臓から連続した腫瘍が確認されました。何かのきっかけで脾臓にできた腫瘍から出血が起こり倒れたのでしょう。すぐに手術をしたかったのですが、ちょっと動くと倒れてしまうような状態だったのでたっぷりと点滴し、乾燥プラズマによる成分輸血を行い手術に挑みました。高齢で危険を伴う手術でしたが、無事に終えることができ高齢とは思えないほどの回復力で元気になっています。とはいえ病理検査の結果次第ではさらなる治療が必要です。今年に入って行っている同手術の検査結果はどれもよくないものでした。今回は・・・悪性でないことを願うばかりです。
安かろう悪かろう・・・petshopの資質。
2006年6月に改正動物愛護管理法が施行されました。それでも国民生活センターには購入したペットについて1000件を超える相談が寄せられていると言うことです。決してこれは他人事ではなく身近で起きていることだなぁと実感する出来事がありました。1件目は陰睾丸のフレンチブルドッグ。購入する際はなんの説明もなく、当院で2度目のワクチンを接種する際に発覚しました。陰睾丸は放置しておくとお腹の中にある睾丸が癌化することもあるため手術をしなければなりません。2件目は気管虚脱のチワワ。購入する際、咳をしていたのだけれど『風邪だから薬を飲んでいれば大丈夫』とのことで購入したが症状は変わらず、レントゲンを撮ってみたら病気が発覚。店側の対応は『交換させていただきます』とだけ。3件目は写真の前肢骨格異常のミニチュアダックス。やはり購入時にはなんの説明もなく、帰ってきてから歩き方をみていたら変だと言うことで来院。現在は痛みはなく元気に歩いてはいますが、将来的には関節炎になる可能性があります。この3件の事例はすべて同一ショップから販売されたペットの話です。 [もっと読む…] about 安かろう悪かろう・・・petshopの資質。
どの方法でいくか・・・。
先日、チワワの膝蓋骨脱臼の手術を行いました。膝蓋骨脱臼を起こしているということは触診やレントゲンで診断することが出来ますが、いざ手術ということになるとどの方法でいったら良いか考えてしまうことがあります。この前、久しぶりにみなとよこはま動物病院に行くと、永岡勝好先生が膝蓋骨脱臼の手術をするということで拝見させていただきました。同体で同じ脱臼とはいえ右足と左足では手術内容も異なるのは当然なのですが、自分が勤務していた頃とは手術方法も更に進歩していました。同じ脱臼だからといってこの方法といった定番が必ずしも存在しない膝蓋骨脱臼の整復手術。改めて膝関節外科の奥深さを垣間見てきました。
そんなことを踏まえながら今回挑んだ手術、右足は大腿四頭筋と膝蓋骨を支えている靱帯のアライメントを整えること脱臼をコントロール、左足はこれらだけでは不十分だったため再度手術を行いスクリューを1本うつことで脱臼をコントロール出来たようです。整形外科(特に関節外科)は術後のリハビリが大切なことをお話しし、昨日退院に至りました。スクリューをうった方の足に少々挙上が残っていますがこれからしっかり経過を観察していきたいと思っています。