皆さんテレビで1度くらいは目にしたことがあるかと思います“ぽちたま”のまさおくんが亡くなったという記事を本日の朝刊で目にしました。レトリーバーによくみられるというリンパ腫だったようです。まだ7歳、元気に走り回っていてもおかしくない年齢ですがタレント犬というストレスもあったのでしょうか?リンパ腫も癌治療の進歩でコントロールの取れる病気になりつつありますが、それでもタイプによっては癌が急速に拡がり命を奪われしまうものもあります。自分が今まで経験したリンパ腫もほとんどがレトリーバー系で、年齢も7〜8歳に発症しているものばかりでした。人医療のように“癌は早期発見すれば完治する病気”とは言い切れませんが、やはり早期発見し治療することができれば病気をコントロールすることができます。7歳以上のレトリーバーを飼われている飼い主さんはおかかりの病院でチェックしてもらってくださいね。
痒み止めとその効果
当院では皮膚の痒み止めとしての薬を7種類扱っています。抗アレルギー薬・抗ヒスタミン薬・Lシステイン製剤・ステロイド剤など皮膚の状態によって抗生物質などと組み合わせ処方しています。その中でも痒み止めとして著効を示すのはステロイド剤になりますが、使用法を誤れば皮膚病は治るどころか酷くなってしまうこともあります。皮膚病で酷い目にあった飼い主さんのほとんどがステロイド剤を諸悪の根源のような言い方をされるのですが、これはステロイド剤が悪いのではなくその使い方が悪かっただけなのです(本当に悪い薬ならばとうの昔に姿を消していてもおかしくないはず)。それでもステロイド剤を使いたくないという飼い主さんには他の薬を選択することになりますが、実際には他の薬でステロイド剤ほど満足のいく痒み止めはなかなかありません。同等の効果を得るためには薬用量を高めに処方したり、1日3回服用してもらったりとそれなりの条件が必要となりますが、それでも満足できないことだってあります。ご理解いただきたいのは非ステロイド系の痒み止めの治療はコントロールに非常に時間がかかってしまうということです。症状によりけりでしょうが少なくとも1ヶ月位はかかると思ってください。そして薬だけで治療しようとせず食事やおやつに与えているものなどを吟味し体質を改善していきましょう。痒み止めの薬はあくまで症状を隠してしまっただけなのですから。
骨折、骨折また骨折。
12月1日に伯父 野亦賢一の四十九日法要と納骨を行って来ました。住職の法話のなかで四十九日というのは故人との思い出や別れの辛い気持ちを整理するための期間であって、それ以降は通常の生活に戻るひとつの区切りとなるものだというお話しを頂きました。通常の生活・・・というかここ数日は通常の生活よりも非常に忙しい日々が続きました。ヨークシャー・テリアの指(中手骨)4本の骨折、ポメラニアンの前腕部(橈尺骨)骨折、そして他病院さんの症例でしたがダックスフンドの骨盤骨折と、手術好きな(?)私にとっては忙しかったですが充実した日々でした。おかげさまで無事に全ての症例を飼い主さんにお返しすることができたのも、伯父が見守ってくれいていたのかなぁ。12月は師走と言うだけあって何かと忙しくなりペットの事故も増えます。飼い主の皆様、くれぐれも事故の無いようお過ごしください。
犬の歯医者さん
私達獣医が一般的に犬猫の歯科で行う事というと“歯石除去”あるいは“犬歯削り”程度のものが一般的なところです。ところが今回、人の歯医者さんの協力を得ることで折れてしなった大型犬の犬歯を再生する処置(差し歯)を行いました。というかこの歯医者さんのペットなのですが、犬歯を折ってしまったことで歯髄炎を起こし痛がっていたことが今回の試みのスタートでした。まずは抜髄を行い髄空を埋め型どり、次に仮歯となる芯(コア)を装着し、最後に仕上がった本歯(差し歯)を装着し噛み合わせを見るという本格的な作業でした。合計3回の麻酔処置。
そして出来上がった状態が右の写真になります。言われなければわからないくらいの出来栄えに飼い主さんも大満足。私も貴重な体験をすることができました。が、ペットの歯医者さんを本格的にやるとなるとこれまた大変なことです。
獣医のドクハラ
人医療の世界でも問題になっていることですが、獣医療の世界でも少なからず見られるようです。最近のことなのですが、獣医さんに“私の言うことが聞けないなら一切の責任は負えませんよ”と言い放たれたという患者さんが来院されました。その患者さんはもう何も言うことができなかったそうです。先生と呼ばれているといつの間にか偉くなったような錯覚に陥り、“俺が言うことは絶対間違いない。”とプライドばかり高い人間になってしまうのでしょうか?どんなに偉い先生でも間違うこともあるでしょう。ましてや責任を負うということがどんなことかを考えたらこんなことはとても言えません。“自分はこんなに頑張っているんですよ”といったアピールのつもりだったかもしれませんが、もし自分が患者の立場にたって言われたら悲しい(不快)であろう言葉は他の人にとっても同じこと。先生と呼ばれる人間だからこそ注意しなければならないことですね。私も気をつけねば・・・。
まだまだ“得意な”とは言えませんが・・・。
最近になって膝蓋骨脱臼の手術を行う機会が増えてきました。やはり人気の小型犬種であるチワワ・プードル・パピヨンなどが多く、先天的に膝関節が弱い犬種達です。私が永岡勝好先生のもとで過ごしていた3年間、毎日のように膝蓋骨脱臼の手術があり1日多いときでは4〜5件の手術を間近で見ることができました。もちろん手術を見ていたことと実際自分の手で手術を行うのとでは雲泥の差がありますが、このような状態の膝ではこうした方がいいといったアドバイスのおかげで今のところ術後の経過に問題が起きたことはありません。症例数もまだまだ胸を張れるほど多くはありませんが、1つ1つの症例をよく観察しこれからも膝の手術をこなして行きたいと思っています。そして得意な手術は“膝蓋骨脱臼の手術です”と言えるようになりたいものです。
最後の選択肢
獣医師をしていれば経験しなければならないであろう【安楽死】。できる限り避けたい選択ですが、癌などの病気で回復の見込みがない症例や、鎮痛剤を使用しても痛みがコントロール取りにくくなってきた症例においては選択せざる終えない場合もあります。辛いのは判っていても飼い主さんにとっては受け入れがたい選択ではないでしょうか?こんなEntryをしたのは先日、食欲不振と下痢の症状を訴えていた猫の安楽死処置を行ったからです。その猫の病気は猫白血病による消化管に見られるリンパ腫でした。病気のコントロールは難しいかもしれないけれど抗ガン治療をすることができることも説明したのですが、飼い主さんの選択は【安楽死】でした。“この子は短い間だったけど生命をまっとうしました。これから先苦しい思いはさせたくない。”というのが飼い主さんの思いでした。とことん最後まで治療して納得してもらうのも獣医の仕事ですが、完治が望めない病気でペットにとっても飼い主さんにとっても辛い思いを長引かせない【安楽死】を選択するのも獣医の仕事。どちらがよいのか答えを出すことは難しいと思いますが、ペットとその飼い主さんにとってBestな選択ができるように心懸けて行きたいものです。
必要なものはどれかなぁ?
あるお医者さんの話ですが、たくさんの薬やサプリメントをありがたがって飲んでいるのは日本人だけだそうです。私も風邪で病院からもらってきた薬があまりにも多かったことを覚えております。今の症状に対して本当にどれが必要なのかとみてみると5種類もらったうちの1〜2種類だったという方もいるのではないでしょうか。動物医療においても同じこと。何種類も薬を処方されても飲ます飼い主さん、飲まされるペットにとっても少ないにこしたことはないでしょう。サプリメントも同様に今必要なものは何かということを見極められると良いでしょう。商売っ気なしに必要なものについてアドバイスしてくれるところもあれば、飼い主さんの知識がないことをいいことにあれもこれもと勧めてくるところもあります。書店に行くと結構分厚いものから手頃な厚さのサプリメントブックを目にしました。これを全て動物に当てはまることは問題ありますが、今必要なものを見極める手助けになるかと思います。薬もサプリメントもたくさん飲んでいるからといって安心といった考え方は改めていかなくてはなりませんね。
超音波メス
一般的な外科手術で使用されるメスというと皮膚を切開するする金属製のメス、止血効果を持ちながら切開を進めることの電気メスがメジャーなところではないでしょうか。けれども最近では内視鏡手術の際に利用されていた超音波メスが小動物手術にも利用しやすいように改良され販売されるようになりました。当院でも犬と猫の避妊手術の際に使用してみたのですが、2mm以下の血管での止血効果は良好なもので糸による結紮止血なしでも安心して使用することができました。
1つ問題をあげるとすると器具の大きさと形状でしょうか。内視鏡手術から応用(ブレードの短縮)されたものなので実際の小動物手術の際に使用しやすい大きさかというと決してそうとはいえません。形状もできれば止血鉗子ののような形であれば術中に使用しやすいと思われます。私の使用感はさておき、この超音波メスはこれから小動物臨床の世界にも普及していく手術器機になるのでしょう。お手頃な価格でお願いしたいものです。
猫のおしっこ(ニオイの原因)
数日前の新聞の記事に【ネコの尿 臭い原因解明】というものを目にしました。通常では腎臓の病気になることで尿中にタンパク質が大量に放出されるのですが、猫においては健康であっても大量のタンパク質を含んだ尿を排泄しています。このタンパク質(コーキシン)が問題で、猫の尿のニオイの元になっているということを理化学研究所と岩手大学のチームが解明したということです。注目したいのは問題となるタンパク質は生後3ヶ月未満の猫からは検出されないこと、更には雌猫・去勢した雄猫からは1/4程度しか検出されないということ。マーキングが問題になる雄猫の去勢手術は早めに行ってしまうのが良さそうです。ニオイのメカニズムが解明されれば、猫の尿で頭を悩ますことがなくなるかもしれません。