本日は19日になくなった伯父、野亦賢一(前・当院院長)の密葬を行ってきました。私が宇都宮に戻ってきて5年目、亡くなる直前まで食事をしていただけに嘘のような出来事でした。子供がいない伯父は私のことを非常に可愛がってくれ、大学時代は休みを終え下宿先に帰るときには必ずといってよいほどあっても困らないものだからと小遣いを持たせてくれたものでした。大学を卒業し、横浜での研修を終え宇都宮に帰ってきたときには伯父と父と私の3人で同じ仕事ができるということで喜んでくれたことを覚えています。私の仕事が暇だったときには伯父が好きだった庭いじり用の道具や土を買いに近所のホームセンターに連れて行ったりすることができたのですが、最近は私も少々忙しくなってしまい買い物どころが会話する機会も少なくなっていました。そんななかでの伯父の死は受け入れがいたものがあります。してもらうばかりで何もしてあげられなかった伯父に一言『今までありがとう』これからの病院の行く末を見守っていてください。【本葬は25日、午前10時より栃の葉葬儀社戸祭ホールにて行わせていただきます。】
ヘルニアの中身は・・・。
このレントゲン写真をみてみなさんは何だと思われるでしょう。実際の犬とこのレントゲン写真だけ見ると乳腺腫瘍のようなのですが、これは以前にもEntryしたことのあるソ径ヘルニアでした。どうも乳腺腫瘍とは異なる触感と飼い主さんから聞いた今までの経過から、ヘルニアであろうとは思っていたのですが中身がなんと《子宮体と卵巣》だとは思いもよりませんでした。通常、避妊手術の際にはなかなか引き上げてくることが大変な卵巣がこの大きなヘルニア内に納まるなんて・・・。ホントに生き物の体には何が起こるか判りません。年齢不詳(おそらく8歳以上)でしかもパグということで麻酔のリスクもあったのですが、無事手術を終えることができました。明日からはさっぱりしたおなかで散歩ができそうです。
絶対なんてことはない。
この世の中に絶対ということは存在しないと思います。特に命に関わることに関しては特にそうではないでしょうか。手術前に全ての検査をクリアーしていざ手術ということで麻酔をかけたけれど安定せずに手術を中止せざるおえなかったり、非常に安全性の高いといわれている薬(薬に限らず経口物質)なのに薬効ではなく思わぬ反応が出てしまったりと、大丈夫と思っていることでも思わぬ事態が起きるものです。世の中に氾濫する“絶対副作用はありません”とか“絶対これを使用すれば健康になれる”というものこそ、冷静に一歩引いた視点からよく判断した方がいいと思っています。私個人的な意見になりますが“絶対”という言葉を発すること自体、驕り以外のなにものでもないような気がします。医療に関わるものとしては特に患者さんに対して“絶対”という言葉は使用しない(避ける)と思いますが、良い方向での“絶対”を約束できるような努力をしていかねばならないと思っています。
昨日の【バンキシャ!】
みなさんは昨日18時から日本テレビで放送された【バンキシャ!】は御覧になりましたでしょうか。広島ドックパークが閉園し、そこに残された500匹以上の犬の現状とボランティア活動をしている方々を紹介している内容だったのですが、何より憤りを感じたのは経営や管理に携わっていた人間の無責任さです。経営が順調なときこそ犬達は大切であったのでしょうが、閉園してしまえばただのお荷物のごとく扱われ食事を与えられることもなく死んでいった犬も数多くいたことでしょう。現在、全国には犬猫を中心としたテーマパークが数多くありますが、第2の広島ドッグパークのようなことが起こらないことを願うばかりです。
外耳炎治療にはこれ。
横浜で研修医として働き始めた頃、初めて診察室に立たせてもらえた症例は耳処置でした。イヤーローションで外耳を洗浄し、仕上げに使用していた薬がこの【オトマックス】です。当時は何気なく使用していたのですが、日本で買えるものではなく海外から個人輸入でしか手に入らない貴重な(?)薬でした。それがやっと日本の業者から手軽に入手することができるようになりました。この【オトマックス】、海外では外耳炎治療薬のスタンダードといわれるくらいの薬なのに今まで日本に導入されてこなかったのは、日本の薬に対する承認の厳しさがあります。国内メーカーからも様々な外耳炎治療薬が発売され効果を上げているようですが、【オトマックス】の登場によりさらに外耳炎治療の選択肢が増えることは飼い主さんにとっては喜ばしいことではないでしょうか。どんな薬も全てに効果があるとは限りませんが、外耳炎でお悩みの飼い主さんは是非一度お試しになってください。
獣医は自殺率No.1の職業?
いきなりショッキングなタイトルですがこれはイギリスでのお話しです。とあるホームページで目にした記事なのですが、私自身もちょっと“ギョッと”しました。そこには【飼い主の期待が重すぎる】ことで、それに耐えきれなくなり自ら命を絶ってしまう獣医さんがいるというのです。確かに近年のペットブームにおいてペットに関わる仕事の需要は増えてきています。その中で動物医療については人並みの内容が求められるようになり、不幸にしてペットが亡くなられた時も場合によっては訴訟問題にまでなる時代となりました。明らかなミスや誠意のない対応で訴訟を起こされるのは自業自得でしょうが、できる限りの対応をとっていたにもかかわらず訴訟を起こされるようなことがあったとしたら・・・。個人で病院を切り盛りしている先生だったら獣医を辞めてしまおうか、さらに思い詰めれば自殺してしまおうかという衝動に駆られてもおかしくないと思います。幸いにも私はまだ大きな問題を抱えたことがないのでこのような思いを抱いたことはありませんが、獣医師にとって【飼い主の期待の重さ】は時として大きなプレッシャーになっていることは事実です。けれどもこのプレッシャーをプラスの方向に向けることができるよう、日々の努力を積んでいきたいと思います。
ニキビダニの治療について。
今までこのHomePageで何度も取り上げ、そして今でも多くの問い合わせがあるニキビダニの治療について再度Entryしたいと思います。まずニキビダニというものは犬の皮膚の正常叢の一員であり、健康な犬でも場合によっては観察されることがあります。そしてニキビダニが皮膚に病変を来すのは、寄生数がその個体の免疫系の耐えうる能力を超えたときに起こるようです。そしてその病態は局所性と全身性に分類されますが、局所性の場合飼い主さんも気がつかないうちに発症し自然治癒してしまうものもあるようです。問題となるのは全身性の場合で、ニキビダニの感染とともに細菌の二次感染も併発し痒み・炎症・浸出液を伴います。治療について・・・ [もっと読む…] about ニキビダニの治療について。
14歳だけど・・・
2日前、歩き方がおかしいと言うことで来院されたサクラちゃん。今朝は食欲もなく嘔吐しているということなのでいろいろな検査を行うことにしました。血液検査では大きな異常は無かったのですが、レントゲン検査・超音波検査で下腹部に通常では確認されないはずの管腔臓器が・・・。
私:“サクラはまだ卵巣と子宮はついてましたっけ?” 飼い主さん:“まだありますよ。そういえば1週間くらい前、雄犬がサクラに乗っかろうとしてました。” みなさん何となくお判りかと思います。そう“子宮蓄膿症”です。体の状態が良かったので入院・即手術、そして本日退院の運びとなりました。おそらく来院が2~3日遅れていたら血液検査では大きな異常が認められたでしょうし、即手術というわけにはいかなかったと思います。病気はいかに発見が早いかで対処方法も変わってきますし、術後の経過も変わります。日頃の飼い主さんによるペットの健康管理の必要性を痛感しました。しかし、高齢ペットの発情様症状は注意しなければなりませんね。
些細な一言
ちょっとした言葉の行き違いで大きな問題が発生することがあります。抽象的ですが“難しい病気”という言葉が“治らない病気”になりいつの間にか“癌で余命がない”になってしまったりします。診断名は同じでも他の病院で“時間はかかるけれど治るもの”と説明されたとしたら、嬉しい反面最初の診断を下した先生に対しての怒りを覚えるかもしれません。説明の仕方一つで患者さんの病気のとらえ方は変わってくると思います。患者さんにはインパクトのある言葉(病名)だけが耳に残ってしまい、いちばん理解して欲しかったことが伝わっていなかったという経験があります。1年以上も前に“言ったか言わないか”なんてことは書面に記録でもしていない限りわかりませんし、そこに感情が絡んでくれば話はこじれるばかりでしょう。診断器機がどんどん良くなっている現在、診断能力は病院によって大きな差はなくなってきていると思います。そこで診断された病気をよく噛み砕き、些細な一言で患者さんと揉めることの無いよう説明できる国語力を身につけていくこと、これからの医療の現場に必要なことですね。
まずは深呼吸を。
犬猫を飼っていて過去に経験したことが無いことに出くわしてしまうとパニックになって電話をされてくる方がいらっしゃいます。可愛いペットのことですから気持ちは判りますが、落ち着いてまず状態を確認してみましょう。電話をされてきた方にまず落ち着いてもらい、電話でいろいろ確認をしてもらっているうちに“あれっ。元気になっちゃった。”ということが結構あったものです。本当に救急を要するものかどうか見分けることは焦っているときには難しいと思いますが、まず元気があるのかないのか?痛がっているかいないか?出血があるのかないのか?など、病院側としても重傷度を判断する材料は多く挙げていただいた方が対処法をアドバイスすることができます。口がきけないペットですから飼い主さんから的確な情報を私たちに伝えていただくことが救急治療の鍵になります。それでは最後にもう一度、電話する前には落ち着いて深呼吸を。